2007

10.05

« すずめつかまえた »

ちょい前のことです。
人との待ち合わせ場所に向かうため俺は地下鉄に乗り込み、
座席に腰を下ろしました。

そしたらどこからか、何か聞こえるんです。
最初は誰かの携帯の着信か?と思ってたんですが
そのうちまた、それは近くから聞こえてくるのでした。

「ちゅん!」

えええ? なに? 誰か鳥でも運んでんの?と思って
周囲を見回したら、向かいの座席の人が俺の頭上を見てる。
そんで見上げたらいたんです、すずめが。
網棚にとまってるんです。

なんで、どーして、電車の中にすずめが。
俺の隣の女性も、他の人も気づいたようで、みんな見上げてます。

よくよく見るとそのすずめはまだ少し幼いようで
一生懸命、網棚のアミから落ちないようにふんばってます。

この電車は俺が乗車する少し前までは地上を走ってて、
それからこの地下に潜って、また地上に出るのです。
でもそれまでの地下の駅ですずめが外に出てしまったら
そこから地上に上がるのは難易度ウルトラCです。
どの駅も地下深くにあるし、構内は複雑だし。

心配になって、どうしたもんかとすずめを見ていたのですが、
途中とまった駅で人がたくさん乗り込んできて
恐れていたことが起こりました。
何も知らないオッサンが勢いよくカバンを
網棚に置こうとしたのです。

「ちゅーーーん!」

すずめは驚いて混雑する乗客の頭上をばたばたと飛び回り、
何事かとあたりはざわめきました。
そしてまたすずめは同じところへ戻ろうとしたのか
そのまま、俺の隣の女性の横に着地しました。

今しかない、と俺はその女性に…じゃなかった
すずめに手をのばし、捕まえることに成功しました。
ホッとしました。
事の一部始終を見ていた周囲の乗客もホッとしてました。

すずめ捕まえた

すずめは俺の手の中でおとなしくしてます。
隣の女性に声をかけられ、ちょっと話をしました。

「捕まえられてよかったですねー」
「もうちょいしたら俺、地上の駅で降りるんで
 こいつは適当なところで放しますよ」
「じゃあ、一緒に行こうかな」
「鳥好きなんですか? あ、せっかくだから
 すみませんがカバンから俺の携帯を取り出して
 すずめを撮ってもらえません? 記念撮影ってことでー」
「それなら私も撮ろうっと」

こんな感じで携帯で撮影してもらいました。
周囲からは笑いも起きてました。
みんな見ず知らずなのに、ほのぼのした空気に包まれて
このムードはちょっといい感じ。

すずめ1

両手でしっかりすずめを握ってよくよく見ると
ホントに可愛い。
電車に乗り込んだってことはそこそこ飛べるんだし、
地上に出たら、途中の公園かどこかで放すことにしました。
乗り込んだ駅からはかなり離れてしまってるだろうから
可哀想なのですが、どうしようもありません。

やがて駅に着き、すずめを握りしめたまま
改札までその女性と一緒に向かい、俺はここを出るわけですが
彼女はこの駅で降りる予定ではなかったそうなので
後は俺が何とかしますよーんと言って別れました。

そういや以前も電車の中で誰かが忘れてった鞄を拾ったとき、
降りて駅員に届けようとしたら、鞄の横に座ってた女性に
「私も一緒に行きます」と同行されたことがあります。
俺ひとりでは不安そうに思われるんでしょうか。むむむ

それにしてもこの駅から遠くへ歩いても歩いても
公園とか、木々といったものが無い。
約束の時間もとっくに過ぎちゃって焦る焦る。
都会はいやずらー、などと思いながらも
何とか適当な茂みを見つけて、そこですずめを放しました。
しばらくは俺の指にとまっていたけど、
そのうち飛んで木の上に飛んでゆきました。

よかったよかった。と思ったけど家に帰って
ネットでいろいろ調べてからは、
あれはまだ自力で生きる力の弱い巣立ちビナだったのかも、とか
猫に襲われないだろうか、とか
やっぱ家に連れ帰って成長するまでエサをあげた方が
よかったんじゃ、などと胸がちくちく痛みました。

すずめ2

それでもやっぱり、それは杞憂であって
ばたばた元気に空を飛んでくれてたらええなぁ、と
今でもときどき思い出しちゃう俺なのです。


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